パターンなしでは始まらない!洋服づくりの設計図を理解しよう
この記事では、洋服づくりにおける基本中の基本、「パターン」についてお話しします。
服づくりに興味のある方は一度は耳にしたことがあるでしょう。
パターンとは、生地を細断するための「型紙」であると同時に、平面の生地を立体的な洋服に仕立てるための「設計図」のようなものです。この設計図がなければ、どんなに美しい生地を持っていても、正確な形に仕上げることが難しくなります。
では、この「パターン」とは一体どのようなもので、なぜそれが重要なのでしょうか?
1. パターンは縫製のための”設計図”
まず、パターンの役割からお伝えしましょう。洋服づくりでは、平らな生地を立体的な服へと変える作業が求められますが、ただ生地を切り取って縫い合わせれば良いというわけではありません。パターンは、身体の各部にフィットするように生地を裁断するための詳細な設計図であり、サイズや形、スタイルを正確に再現するための指針となります。
このパターンを基に生地を裁断し、適切な位置で縫い合わせることで、平面の生地が身体に合う立体的な形に仕上がるのです。
2. パターンなしでは服を縫えない
縫製において、パターンの存在は欠かせません。縫製作業は基本的にはパターン通りに縫うもので、パターンを無視して縫うということはできません。パターンがないと、縫製者は生地をどのように裁断すればよいのか分からず、また各パーツをどのように縫い合わせれば良いのかも分からなくなります。
なぜこのようにパターンを重視して縫製されるかというと、人体は曲面を持つ立体であるのに対して、布は平面だからです。曲面を持つ立体に対して、平面の生地をフィットさせるには、慎重に計算された設計が必要です。
これは、地球儀を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。地球儀は立体ですが、これを平面の地図に展開すると、形状が歪み、元の立体感を正確に再現することができません。逆に、平面から地球儀を作る際には、地図を適切に分割し、曲面に合わせて調整する必要があります。
同じように、平面の布を人体の曲線にフィットさせるためには、布の形状や裁断を工夫し、パターンを用いて立体に仕上げる必要があります。パターンはまさにその役割を担い、布を美しく立体的な服へと変えるための道筋を示してくれるのです。縫製は、まさに平面から地球儀を作り上げるような繊細な作業なのです。
そのためパターンは縫製においては、縫う道筋を示すガイドラインの役割を果たします。パターンがなければ、縫製の途中でどのように進めればよいかが分からなくなり、方向を見失ってしまうことになります。
3. 量産を支える工業用パターン
ここで「工業用パターン」というものにも触れておきたいと思います。
工業用パターンは、量産のために設計されたパターンであり、その工業性はファッション業界の効率的な生産において不可欠です。これらのパターンは、縫製工場における品質を均一に保つことを重視されていると同時に、コストコントロールにも影響します。
品質のコントロール
工場における量産体制では、品質の均一性が問われます。均一性の実現のため、工業用パターンは縫製プロセス全体を効率化するために設計されます。生産スピードの向上とミスの削減を目指し、必ずしも熟練した職人による作業でなくても、均一の仕上がりを実現できるよう、工程の最適化と標準化を重視して設計されています。
コストのコントロール
さらに工業用パターンは、生地の無駄を最小限に抑えるための設計がなされています。1反の生地から取れる製品の「取れ枚」数を重視して、効率的なマーキングが計算されます。これにより、生産コストの最適化が図られ、コスト削減にも寄与します。特に、大量生産においては、生地の使用効率が販売価格にも直接影響を与えるため、工業用パターンはコスト管理においても重要な役割を果たしています。
工場では、こうしたパターンに基づいて大量の服が高速で生産され、その過程で品質を損なうことなく、消費者に届く製品を安定的に供給することが可能になります。
サイズ展開のコントロール
工業用パターンのもう一つの特徴は、グレーディング(サイズ展開)と管理です。アパレルCADを使用することで、異なるサイズのパターンが迅速かつ正確に作成でき、サイズ展開が効率化されます。この技術により、サイズごとの微妙な修正や、デザインに応じたサイズ展開が容易に行えるため、さまざまな体型やスタイルに対応した洋服を大量生産することが可能です。
さらに、アパレルCADでのグレーディングにより、サイズ間での一貫性を保ちつつも、生地の裁断や縫製工程を最適化することができ、効率的な生産が実現します。これにより、異なるサイズやデザインにも柔軟に対応できるだけでなく、世界中の工場で統一されたパターンを使った生産が可能になり、品質と効率の両方を高い水準で維持できるのです。
このように、工業用パターンは、精度、効率、コスト削減を追求し、現代のファッション業界における大量生産の基盤となっています。